私はいつも『NIKKEI PODCAST:日経ヴェリタス 曽根純恵のナルホドそーね』を聴いています。
先週は「上場郵政の宿題~異例の親子同時、身構える市場」と題して、日本郵政グループのIPO(新規上場)の論点について面白い解説がされていましたので、以下に簡単にサマリーを紹介したいと思います。
目次
日本郵政グループの上場とは
・日本郵政グループは、持ち株(ホールディングス)会社である①日本郵政の下に、子会社である②日本郵便、③ゆうちょ銀行、④かんぽ生命保険、の3社がぶらさがる形で構成されている。
・この秋に予定されているのは、異例の3社同時上場で、①日本郵政、③ゆうちょ銀行、④かんぽ生命、が対象となる。(=②日本郵便は上場しない。)
何故、話題なのか
異例の上場規模である
1998年にNTTドコモが時価総額8兆8000億円で上場して以来の超大型案件であり、今回も3社合計でそれくらいの規模に匹敵すると言われている。
親子3社で同時に上場するという変わったスキームである
親会社(日本郵政)と子会社(ゆうちょ銀行、かんぽ生命)が同時に上場するケースはかなり特殊で、それぞれの会社のバリュエーション(価値算定)などを複雑にさせている側面がある。
日本郵政グループ上場における課題3つ
課題1 1兆円にのぼる内部手数料の根拠
ゆうちょ銀行やかんぽ生命は、郵便局の窓口で預金や保険などの金融商品を取り扱ってもらっている対価として、日本郵便に対し委託手数料を支払っており、日本郵便はゆうちょ銀行とかんぽ生命から年間1兆円近くの手数料を受け取っている。
日本郵便は、本業の郵便事業が事実上の赤字だが、ゆうちょ銀行やかんぽ生命から受け取る手数料でその赤字を補填するような事業構造になっている。
問題になっているのはこの内部手数料の透明性。
今までは非上場会社のグループ企業同士のやり取り(=お財布は1つだった)であったため、基本的には親会社である日本郵政の指示の元で、内部手数料の料率などが決定されており、手数料の計算根拠などは焦点にはならなかったが、上場に際して手数料算定の根拠を明確にする必要性が生じてきている、とのこと。
ゆうちょ銀行やかんぽ生命が上場した後は、2社は株主価値を最大化するための企業行動が求められることになり、親子上場で起こりがちなガバナンスや利益相反がイシューとなりうる。
課題2 ゆうちょ銀行のビジネスモデル
現在、日本郵政グループの株式の100%を政府が保有していますが、今回の上場で2/3程度の株式が売却されるそうです。上場後も1/3超の株主を保有する政府は筆頭株主であり、その点でゆうちょ銀行は暗黙の政府保証が与えられており、金融機関としての信用力はとても高いと言えます。
ゆうちょ銀行では、企業や個人から預かった資金を株式や外国債券へ投資し利ざやを稼ぐ運用収益がメインの収益源となっており、それ以外にも多様な収益源を持つ民間の金融機関とはビジネスモデルが異なるそうです。ゆうちょ銀行にとっては、手元資金が増えすぎてもそれらを運用し収益を得られるかどうか不明な点も大きく、ゆうちょ銀行としてどのような事業モデルを目指すのかが問われている。
課題3 ユニバーサルサービスの重荷
今まで日本郵政が行ってきた過疎地への配達などのユニバーサル(日本全国で公平な)サービスは一般的にコスト高と言われています。上場後は、無駄なコストを排除し収益率を高める企業活動が株主から求められることになり、こうしたレガシー的なユニバーサルサービスのコスト負担が継続できるか、それともコスト高なサービスはどんどん廃止させていくのか、といったオペレーション効率化の是非の議論が行われることになる。
ターゲットは機関投資家ではなく個人投資家
以上の論点が、上場3社のバリュエーション(企業価値の算定)を複雑で困難なものにしているそうです。バリュエーションが困難ということは、適性な株価を算出することが困難ということなので、機関投資家はなかなか手が出しにくい案件であると言えます。
一方、個々人にとって日本郵政グループの企業は大変馴染みのある企業であることもあり、個人投資家ががメインの売り出し先になることは間違いありません。
15年6月末の時点で3社の売り出し価格は未定ですが、①配当利回り3%は確保される、②個人投資家がNISA枠を使って株式を購入できるように売り出し価格を3社あわせて80-90万円程度に抑える、など個人投資家にとって投資しやすいスキームが検討されているようなので期待したいと思います。また、今回の郵政グループ上場で調達した資金は、政府の復興財源に充てるそうなので、社会的な意義も大きい上場案件であると言えると思います。
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以上、『NIKKEI PODCAST:日経ヴェリタス 曽根純恵のナルホドそーね』より「上場郵政の宿題~異例の親子同時、身構える市場」のサマリーでした。乱筆ですみません。