経営不振企業の上場廃止や、粉飾決算などゴーイングコンサーン(継続企業の前提)であるべき企業の屋台骨を揺るがすNEWSを聞くたびに、投資(特に株式)に及び腰になってしまう方もいるかと思います。
今日は、一般投資家でもできる企業の経営リスクのチェック方法を紹介したいと思います。
目次
有価証券報告書で注意シグナルを見逃さない
有価証券報告書と監査業務
上場企業は、株主や投資家に対して経営状況を正確に知らせるという義務を負っています。決算期が終わった後、「有価証券報告書」という書類を公表し、経営成績や期末時点での資産・負債などを財務諸表として詳しく記載しています。
有価証券の記載の正当性をチェックするのが「監査」という仕事です。企業から独立した監査法人や公認会計士が企業活動を第三者の視点で調査し、財務データのチェックを行います。
監査業務の主体
ちなみに日本における4大監査法人(ビッグ4)は、新日本有限責任監査法人(アーンスト・アンド・ヤングと提携)、有限責任あずさ監査法人(KPMGと提携)、有限責任監査法人トーマツ(デロイト トウシュ トーマツのメンバーファーム) 、あらた監査法人(プライスウォーターハウスクーパースと提携)です。
監査業務が終了し、正しいと判断すれば、「適正」、正しくなければ「不適正」、意見を表明するだけの根拠が得られない場合は「意見不表明」とします。こうした監査人の意見は、電子開示システムである金融庁のEDINETで閲覧することができます。
ゴーイングコンサーン(GC)に関する注記/追記
上場企業は、ゴーイングコンサーン(継続企業)というのが大前提になっていますが、赤字が続いたり債務超過など企業の財務体質に大きな問題がおきている時は、企業は「ゴーイングコンサーンに関する注記(よくGC注記と略されます)」としてその実態を公表しなければなりません。監査人は、企業のGC注記に対しても「追記」として意見を表明することができます。
東京商工リサーチによると、2014年3月期決算を発表した上場企業2,467社のうち、監査法人からGC注記が付いた企業は27社だったそうです。最近ではスカイマークやシャープなどがそれに該当します。
内部統制機能にも注目
内部統制とは
会計監査人が企業の活動を警察のように全て把握し、売上伝票や帳簿のウソを精査できる訳ではないので、それを補う仕組みが「内部統制」です。企業の内部管理やチェック機能強化の体制を整えようというもので、日本でも2009年ごろから各企業ともに内部統制の監査という制度を導入してきました。
内部統制の評価
内部統制の評価としては、まず企業自身が内部統制の仕組みがうまく機能しているかどうかを経営者自身が判断・評価します。その後、それについて監査人が適正かどうかを判断する2段階の仕組みになっています。監査人は、企業の財務諸表と、内部統制の両面からチェックするわけです。
レキシコム研究所によると、2014年3月期決算を発表し内部統制報告書を提出した上場企業2,471社のうち、自社の内部統制が「有効でない」と回答した企業は7社だったそうです。
投資家として、有価証券報告書や内部統制報告書上で赤信号が点灯している企業への投資は当然、控えるべきでしょう。
企業と監査人の評価と市場への影響
監査結果
【評価の内容】 【株価や市場への影響】
財務諸表の監査で「不適正」「意見不表明」 → 上場廃止の審査対象になる
内部統制の監査で「不適正」「意見不表明」 → 上場廃止の審査対象にはならない
経営存続に関する「重要な疑義」の追記あり → 株価下落要因になる傾向
企業の報告
【評価の内容】 【株価や市場への影響】
内部統制が「有効でない」と表明した → 2期以上続くと株価下落要因になる傾向
経営存続に関する「重要な疑義」の注記あり → 株価下落要因になる傾向
まとめ(企業ディスクロージャーここに注目)
財務諸表
【企業が公表】 有価証券報告書の中に掲載
【監査人が公表】 監査報告書で(財務諸表の内容に対して)「適正」「不適正」などの判断を示す
内部統制
【企業が公表】 内部統制報告書で有効化どうかの判断を示す
【監査人が公表】 監査報告書(内部統制報告書の内容に対して)「適正」「不適正」などの判断を示す
企業の存続リスク
【企業が公表】 存続に「重要な疑義」があれば、有価証券報告書に「注記」
【監査人が公表】 監査報告書の「追記」に記載